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移動薬局やDMATへ医薬品供給を継続  能登地震で地元卸の明祥、災害医療の維持に貢献【無料公開】

2024/1/26 04:30

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岐阜県薬剤師会のモバイルファーマシー

 能登半島地震で大きな被害を受けた奥能登2市2町の医療提供体制を支えるため、北陸3県を地盤とする地元卸の明祥(本社=金沢市)が、被災地で活動するモバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両、MP)やDMAT(災害派遣医療チーム)への医薬品の供給を続けている。石川県薬剤師会や県薬事衛生課と連携し、依頼があった医薬品の配送を連日にわたり実施。発災から初動の段階を乗り越えるため、被災地での災害医療の維持に一役買っている。

 MPは、東日本大震災を契機として創設された移動型の薬局で、調剤用の機器だけでなく、水や発電機も備えて自立して運営できる。DMATは、発災直後の急性期から活動する機動性を持った医療チームで、被災地ではDMATの医師から出された災害処方箋に基づき、MPの薬剤師が調剤するなど協力して被災者の救命に当たっている。

●第1陣から「スターターパック」を供給

 岐阜県薬剤師会のMPが7日に金沢市から出動し、第1陣として珠洲市での活動を開始したが、このMPにも明祥が取りそろえた医薬品が搭載された。明祥では、6日にMPの活動で災害時に必要な「スターターパック」の医薬品リストの連絡を受け、翌7日早朝に金沢市内で受け渡しを行い、その後も被災地のMPに医薬品の供給を続けている。

 明祥の石黒亘執行役員・管理本部長は、「被災地で活動するMPの台数は増えてきているが、特に被害が大きい輪島市や珠洲市で医薬品の配送量が多い印象だ。スターターパックの医薬品に加えて、直近では感染症治療薬や褥瘡関連の注文が増えている」と現状を語る。

 出荷調整品を中心に一部の医薬品を十分に供給できないことから、9日には石川県薬業卸協同組合などが医薬品を北陸エリアに優先的に提供するよう要請していたが、「顧客や必要な医薬品の量を具体的に製薬企業と共有することで、緊急性の高いところから供給してもらえるようになってきている」と話し、被災地での医薬品の供給は改善傾向にあるとの見方も示した。

 DMAT向けの医薬品については、県薬事衛生課と連携し、消毒剤や新型コロナウイルス感染症の検査キットなどを、DMATや病院に届ける取り組みも並行して実施しているという。

●復旧に向け、安全第一で配送継続

 24日時点では奥能登への医薬品の配送は、輪島市や珠洲市をはじめ6コースを設定し、1コースは2人1組で対応している。このうち4コースはMP向けも含めて医薬品の配送を行っており、本社や福井・富山の両県からの応援部隊の派遣も含めて人員をやりくりしている。

 石黒氏は「積雪で道路状況が悪くなることもあるが、事故を起こしては元も子もないので、無理せず安全を確保した上での配送を心がけている。求められているところに医薬品を運ぶという卸本来の役割を引き続き果たしていく」と復旧に向けて先を見据える。(加藤 祐樹)

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