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医薬品配送の平常化、「相当日数かかる」  能登地震1カ月でファイネス・松井社長【無料公開】

2024/2/6 04:30

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 ファイネスの松井秀太郎社長は日刊薬業の取材に応じ、能登半島地震の発災から1カ月が経過する中、半島北部の奥能登エリアへの医薬品配送を平常化して従来通りの手法で実施できるようになる時期は現状ではまだ見通せていないとし、地震からの復旧はまだ道半ばの地点にあるとの認識を示した。

 松井社長は、「七尾市から先は道路が寸断されている箇所がまだあり、特に半島に沿った海側のルートは使える状態にない。配送ルートを細かく分けてピンポイントで個々の得意先に医薬品を届けているのが現状で、(従来通り)得意先を巡回して効率良く配送するようにはなっていない」と述べ、道路の復旧がさらに進んで奥能登への配送が平常化するまでには、相当の日数がかかるのではないかとの展望を示した。

●配送回数減少もなるべく早く届けるよう努力

 実際、従来は1日2回で行っていた配送ルートでも、発災後は配送が長時間かかることもあり1日1回に減らす形での対応を余儀なくされている。ただ、配送の減便は地震の影響によるものだと顧客にも理解してもらっているといい、被災地で必要な医薬品をなるべく早く届けるため、通常の発注時間を超えた場合でも、柔軟に注文を受け付けて翌日に配送できるよう尽力している。

 珠洲市や輪島市、能登町、穴水町の奥能登2市2町では、公立病院を中心に医療提供を続けている。診療所や薬局は建屋が地震の被害で立ち入ることができなくなったり、断水が続いたりして一部の事業所が時短営業などの対応を取っているものの、全般として復旧が進みつつあるもようだ。

●通常と異なる医薬品の需要増への準備も

 一方で、能登から金沢方面へ避難してきた被災者への対応も課題として浮上。金沢市内だけでも宿泊施設も含めて160カ所を超える2次避難所が立ち上がっており、医薬品のニーズがある被災者がどこにどれだけいるのか、地域の医師会を中心に巡回して確認する作業が始まっているという。卸としては巡回診療で通常と異なる医薬品の需要が増えたとしても、供給できるよう準備している。

●耐震性備えた物流拠点が10月から稼働へ

 松井社長は、地震をはじめ災害への備えを充実させていくことの重要性にも言及した。本社に併設する形で今年10月に稼働を開始する新たな物流センターは、県庁などの防災拠点施設と同程度の耐震性能を持たせるべく現在建設を進めている。

 「施工会社が今回の地震を受けて建屋に被害がないか調査したが、梁や土台は1ミリも動いておらず、図らずも地震に強いことが証明された」と説明。敷地内にはヘリポートも設けて緊急時には遠方からも医薬品の受け渡しができるようにすることを構想しており、「より災害に強い体制を構築していきたい」と意気込みを語った。

 ソフト面では、災害時の対応を関係団体とあらかじめ詰めておくことも必要とし、今回の地震への対応が落ち着いた段階で取り組みを進める方針も提示。地域の医師会や薬剤師会、コメディカルの団体と協議することで災害時に相互に協力できる分野を探っていきたいとした。

●動物薬の顧客も地震で被害

 同社では、動物用医薬品も取り扱っており、地震が畜産関係の顧客に影響を及ぼしていることにも触れた。「地震による被害が大きいとみられるのが牛や鶏を飼育する得意先だ。どちらも1日当たり大量の水を消費するが、道路が寸断されて断水も生じたために水を供給できない場合もあったと聞いている」と話し、乳牛については水や餌を十分に与えられなかったことから乳質や乳量が低下している状況があることを紹介。牛舎が倒壊して牛が下敷きになった事例があるほか、道路の寸断によりまだ人が到達できていない養鶏場もあるという。(加藤 祐樹)

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