能登半島地震で被災地の避難所に滞在する人や避難所から金沢市などに2次避難する人の間で風邪やインフルエンザなどの感染症治療薬のニーズが高まっている状況を踏まえ、石川県薬剤師会の中森慶滋会長は18日に金沢市を視察で訪れる武見敬三厚生労働相に対し、製薬各社が石川県内で特例的に医薬品の限定出荷を解除するような施策を講じるよう県庁で直接要望する予定だ。17日に金沢市内で行った日刊薬業の取材で明らかにした。
●地元卸組合が優先供給を要請
発災から2週間が経過し、外傷などに対応する医薬品から避難生活で被災者が罹患する風邪など感染症治療薬に医療ニーズが移る中、石川県薬業卸協同組合と日本医薬品卸売業連合会は9日、連名で日本製薬団体連合会に対し、限定出荷品や被災地で必要な医薬品を北陸エリアに優先的に提供するよう要請を行った。
●製薬各社が融通も不足は解消されず
取材した地元卸の感触では、製薬各社が融通してくれているのを感じつつも、末端の医療現場では医薬品不足はまだ解消されていない。
今後は金沢市内などへの2次避難も進むため、医薬品不足は被災地だけでなく石川県全体の問題となる。そのため石川県薬はさらに一歩踏み込んだ対策を国に要望することにした。
●気管支喘息・アレルギー性鼻炎薬が不足
取材をした前日の16日にも穴水町に出動し避難所などの住民の調剤を支えているモバイルファーマシーから気管支喘息・アレルギー性鼻炎治療剤プランルカストやモンテルカストが不足しているとの連絡が中森氏の元に寄せられていた。
●鎮咳・去痰薬や解熱鎮痛剤なども
このほか、鎮咳薬デキストロメトルファンや去痰薬カルボシステインなど全国的に品薄の製品も被災地で不足している。
県内の避難所には17日時点で約1万5000人が避難しており、風邪や感染症が流行しており、中森氏は「平時よりも医薬品のニーズがさらに増している」と述べる。
また金沢市でホテルを借り上げるなどして2次避難も進められており、17日時点で1528人が避難している。県は最大3万人まで受け入れ可能としている。
中森氏の元には避難者の受け入れに伴い金沢市内でもすでに解熱鎮痛剤や抗生剤、総合感冒剤などの需要が増えているとの報告も上がっている。特に小児科では大人用の製剤を代用するのが難しい細粒やドライシロップなど小児に合った剤形の薬も品薄になっているという。
●薬剤師支援活動、長期化にらみ援助要請へ
また中森氏は発災から15日時点で全国各地から累計363人の薬剤師がボランティアとして被災地の医療支援に入っていることについて「全国からの『薬剤師魂』に本当に感謝している」と謝辞を述べた。
ただ震災復興には時間が相当かかることが予想され、今後長期化した場合に薬剤師のボランティアの不足が予想される。このため交通費や宿泊費、日当など支援体制を維持していくための援助も合わせて武見大臣に要望する予定だ。(海老沢 岳)