日刊薬業トップ > 医薬品流通 > 在庫逼迫の中で被災地に医薬品優先提供  地元卸組合が製薬各社に感謝、道路復旧が喫緊の課題【無料公開】

在庫逼迫の中で被災地に医薬品優先提供  地元卸組合が製薬各社に感謝、道路復旧が喫緊の課題【無料公開】

2024/1/18 04:30

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取材に応じた石川県薬業卸協同組合の河村氏

 石川県薬業卸協同組合(折本健次理事長)は16日、日刊薬業の取材に応じ、製薬企業各社が医薬品供給問題の影響で在庫が逼迫する中で能登半島地震の被災地に優先的に医薬品を振り向けていることに感謝した。一方、それら医薬品を被災地に運ぶために欠かせない道路の状況は依然として悪く、早期の復旧を行政に呼びかけた。

 県卸組合で事務局を務めている明祥の河村幸一氏が金沢市内で取材に応じた。
 
 県卸組合に所属する卸各社は1日の発災から復旧活動に取りかかり営業開始の4日までに順次医薬品、救援物資を配送する体制を確保。土砂崩れや道路に大きな亀裂が入り通行が困難な奥能登にも何とか配送できる体制を整えた。

 9日には日本医薬品卸売業連合会と連名で日本製薬団体連合会や製薬企業に対し、限定出荷品や被災地で必要な医薬品を北陸エリアに優先的に提供するよう要請を行った。

●在庫確保の労力減れば配送に専念できる

 被災エリアに必要な医薬品を届けることが最重要であり、在庫の確保に当たる労力を軽減できれば、被災地への治療薬の配送により専念できるとの考えに立った要請だった。

 河村氏によると、被災地では感冒薬や、去痰剤、鎮咳剤、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザに対応する治療薬のニーズが増えている。

 連名の通知の効果もあり「医薬品不足の中で製薬各社が融通してくれているのを実感し、『頑張って』との言葉もいただき、大変感謝している」と謝辞を述べた。

●七尾市から珠洲市に、片道8時間以上の日も

 一方、今一番の課題は道路事情だ。七尾市までは順調に通行できるが穴水町以北の奥能登に向かう道路は土砂崩れや亀裂の影響で所々徐行が必要で、長時間の渋滞が発生する時もある。

 七尾市から珠洲市まで片道8時間以上かかる日もあることから一日仕事となっており、過去には道路事情により、途中、避難所で仮眠し翌日会社に戻った日もあったという。

 このため河村氏は「道路の早期の復旧を強く望んでいる」と述べた。

●共同配送スキーム案は断念、今後の検討課題に

 こうした道路事情から、組合会社の間で道路事情の悪い奥能登(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)への配送を地域ごとに役割分担を設け共同配送するスキーム案が浮上したが、複数社ある中で集配拠点をどこに置くか、製品の補償を誰が負うかなど解決すべき課題が複数あり、時間を要するため断念したという。

 4日に組合に所属する社が県卸組合に提案。各社配送車がそれぞれ同じ被災地の病院に向かうよりも分担すれば配送員の負担軽減につながり、被災地により手厚く医薬品供給をできるとの考えに基づく提案だった。

 県卸組合が各社に意見を聞くと、各社とも必要性は認識するも、道路事情で他の卸の製品を届けられなかった場合や温度管理が行き届かなかった場合の補償、事故に遭った場合の扱いなど課題が複数挙げられた。

 県卸組合で共同配送のルールがなく、被災地への医薬品の供給が優先される中でルール作りをする時間的余裕もなく今後の検討課題とした。(海老沢 岳)

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