日刊薬業トップ > 医薬品流通 > 【能登地震・同行取材(2)】「穴水は届くも輪島・珠洲が喫緊の課題」  被災地の医薬品供給、ファイネスが奔走【無料公開】

【能登地震・同行取材(2)】「穴水は届くも輪島・珠洲が喫緊の課題」  被災地の医薬品供給、ファイネスが奔走【無料公開】

2024/1/12 04:30

0111_診療の現場へ医薬品を届ける_s1.jpg

 9日午後に地元卸ファイネス(本社=金沢市)の医薬品配送に同行して現地入りした穴水町と能登町では、地震による被害で建物が崩れ、往事は風情があったであろう神社の石塔や街路の石畳は見る影もない形となっていた。つぶさに周囲を見ると、地震の揺れによって崩壊した家屋にまず目がいく。しかし、外観からは窓が割れたくらいで一見すると大きな被害を受けていないような家屋であっても、被災家屋の診断で「危険」の赤紙を玄関口に貼られている様子が見られ、景観以上に住み慣れた住まいを失った人が多いことに気付かされた。

●「慢性疾患の薬がない」、現地薬剤師が訴え

 「穴水町は能登の入り口なので卸さんにきちんと薬を届けてもらい非常に助かっているが、輪島市と珠洲市は道路が寸断されているのでほぼ枯渇した状態。慢性疾患の患者さんの薬がもうないということで、モバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)が出動しているが、それでも足りなくなるのではというのが喫緊の問題だ」。石川県薬剤師会能登北部支部長を務める原将充さんは9日午後、注文した医薬品を穴水町内の薬局で受け取り、充血した目をこちらに向けながら危機感をあらわにする。

●卸車両が優先的に通行できる仕組みを

 感染症も広がりつつあるといい、現地では医薬品がより必要になってくると指摘。患者へ円滑に医薬品を届けるためにも卸の医薬品を載せた車両がきちんと優先的に通行できるよう実効性のある仕組みを整えることや、被災地で医薬品を処方する際の取り扱いをより明確化することが求められていると訴える。

●診療再開で医薬品の需要増か

 被災した現地の医療機関や薬局は、9日午後時点では診療や処方箋の受け付けを再開できていない所もあり、ファイネスの社員が医薬品を届けに行っても、そもそも電気がついておらず誰もいないこともあった。

 取材した医療関係者からは、今後診療を再開する医療機関が増えれば、それに伴い医薬品の需要も増えていくのではないかとの見立ても出ている。今後の復旧の段階に合わせて必要な医薬品が届くことが、現場を支える上では重要との声も多く聞かれた。

●支店ではすでに翌日に向けた作業が

 被災地を後にして夜が迫る中、ファイネスの七尾支店に戻ると、すでに倉庫内では翌日の配送に向けて医薬品の集荷が始まっていた。作業をしている社員に聞くと、普段集荷に従事している社員が被災し、他の部署から応援部隊の一員として入っているという。

 製薬企業から届いた簡易トイレも顧客に届けるために車から降ろされ、支店内に運び入れられていく。そうした様を傍観しながら、昼夜なく一丸となって働く人がいるからこそ、被災地の復旧が一歩一歩進んでいくのだと感じた。(加藤 祐樹)

前のページへ戻る

関連記事