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【能登地震・同行取材】奥能登に医薬品を、地元卸ファイネスが奮闘  1日7ルート配送で被災地診療支える【無料公開】

2024/1/11 04:30

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奥能登へ向かうにつれて工事で片側1車線の箇所が増えた

 能登半島地震の発災から1週間以上が経過する中、被害が特に大きかった能登半島北部の奥能登へ医薬品を供給するべく医薬品卸が奮闘を続けている。石川、富山、福井の北陸3県を中心に事業を展開する地元卸のファイネス(本社=金沢市)では、能登半島中央部にある七尾支店を起点に、奥能登2市2町の医療機関や薬局に対して医薬品だけでなく事業継続に必要な水や燃料も配送し、危急の事態にある診療の現場を縁の下で支えようとしている。9日に奥能登2町である穴水町と能登町向けの医薬品配送に記者が同行し、現地入りして見た現状を2回に分けてリポートする。

●被災地支援を阻む道路被害や渋滞

 9日午前7時、JR金沢駅近くで同社の車両に乗せてもらい、まずは能登半島中央部にある七尾支店に向かう。今回の震災では能登半島の道路が大きな被害を受けて円滑に通行できないため、迅速な被災地支援を阻む要因になっているというが、実際に道路を通行してみてその実態を理解するまでに長い時間はかからなかった。

 まずは渋滞だ。金沢から七尾間の道路には隆起や陥没、ひび割れといった大きな被害はほとんどなく、ほぼ平常通り通行できたものの、自動車専用道路「のと里山海道」に入ってほどなくして車の流れが止まってしまう。

 災害支援車両が容易に通行できるよう交通規制がかかっていたものの、一般車両も規制があるインターチェンジ(IC)までは自由に通行できるようになっており、朝から一斉に被災地入りを目指す災害支援車両と一般車両が混じり合って列を組んだまま、たまに停止しながら時速10キロメートル程度に減速してしまった。

 周囲を見ると関西の自治体名が入った給水車や東北地方の電気工事会社の車両が並んでおり、全国からさまざまな分野の支援が現地に向かっていることを実感した。規制地点のICを越えた途端に車の流れはスムーズになり、通常1時間程度で到着するところ、出発から2時間余り経過した午前9時ごろにようやく七尾支店に到着した。

●リスク踏まえ2人一組での配送も

 七尾支店に勤務する社員は全員が能登半島出身者で、自身も被災者でありながら連日出勤して医薬品の供給を続けているという。ただ、保育園が被災して子どもを預けることができないというような特別な事情を抱える社員は出勤できないため、同社では役員も含めて能登半島の地理に明るい社員を選んで医薬品配送の応援部隊として派遣。平時と違い余震や危険な道路状況といったリスクが高い状況にあることから、通常1人で配送を担当するところ、奥能登は1日7ルートを2人一組でも配送している。

●七尾支店は断水中、援助物資で事業継続

 支店内は、電気の供給に支障はないものの、発災後から断水が継続。同社では同じバイタルケーエスケー・ホールディングスグループ内のバイタルネットやケーエスケーから飲料水やトイレ用水、カセットコンロ、インスタント食品などの融通を順次受けており、事業所の機能を維持して事業を継続していく上でこうした援助物資が必須になっているという。

●医薬品だけでなく水や燃料も提供

 一方、奥能登では被災した医療機関や薬局に対してただ単に医薬品を届けるだけでなく、水や燃料といった事業継続に必要な物資も車両に搭載し、被災した顧客に提供しているという。同社七尾支店の表直記支店長は、「奥能登で被災した方が七尾に避難してきて、こちらの病院にかかった際の処方箋が飛んでくるようにもなっている。通常は受診していない患者への対応も大変で、本社と連絡しながらなんとか対応している状況だ」と苦境を語る。

●災害対策車両で北上、並大抵ではない配送の努力

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バイタルネットから提供を受けた災害対策車両

 七尾からはより道路事情が悪くなるため、バイタルネットから提供してもらった悪路を走行できる特殊車両である災害対策車両に乗り換え、配送先の穴水町や能登町を目指してさらに北上を始めた。

 「どの道が正解か分からない」。同行した金俊章取締役・営業副本部長が北上の途上で思わずそうつぶやく。七尾を出てからは徐々に道路に隆起や陥没、地割れが見られるようになり、刻々と変わる道路状況をグーグルのナビ機能で把握しながら、車1台ようやく通れるような抜け道も選んで先を急いだ。

 道路の被害が目立ってくるにつれて、復旧工事の現場に遭遇する場面も増えていき、こうした場所は片側1車線しか通行できないのがボトルネックなのか、前後で頻繁に渋滞となっていた。これだけでも大変だが、体にこたえたのが車の揺れだ。道路の隆起を乗り越えるたびにドスンと腹に響く縦揺れが生じ、山道をぐるぐる回る際に特有の横への遠心力と相まって体に負担がかかる。

 乗っていた災害対策車両は道路の隆起を見越してか車高が高いために無事全ての箇所を通過できたが、中には雪もあって乗り越えられず、バックした上で助走で加速してようやく乗り越えた隆起もあった。発災直後の烈震か道路事情によるものなのか、乗り捨てられている車両も複数台見られ、穴水町や能登町に到着して医薬品を配り終えるまでには七尾支店の出発からさらに4時間が経過していた。

 これから帰路も同じ道をたどるのかと思うと、連日奥能登へ医薬品を届けている配送担当者の努力は並大抵のものではないと悟った。(加藤 祐樹)※次回に続く。

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